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カスハラ対策、2026年10月から全企業の義務に――いま企業がすべき準備とは

公開日:2026/09/05 / 最終更新日:2026/09/08

2026年10月1日から、改正労働施策総合推進法(働く人の雇用の安定などを目的とする法律です)が施行され、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対策が、すべての企業の法律上の義務になります。

施行まであと1か月となり、報道でも対応を急ぐ企業の様子が伝えられています。

今回は、この「カスハラ対策義務化」について、企業のご担当者にも、一人の「お客様」でもある一般の方にも分かるように整理してみたいと思います。

1. そもそも「カスハラ」とは――クレームとの違い

カスハラとは、大まかに言えば、顧客や取引先などによる言動のうち、社会通念上許容される範囲を超えたものによって、働く人の就業環境が害されることを指すと整理されています。

ポイントは、

①顧客・取引先など事業に関係する人の言動であること、

②要求の内容やその手段・態様が社会通念上の許容範囲を超えていること、

③それによって従業員の働く環境が害されること、

という3つの要素で考えられている点です。

注意したいのは、商品やサービスへの正当な指摘・苦情まで「カスハラ」になるわけではない、ということです。むしろ正当なクレームは企業にとって改善の機会でもあります。

問題になるのは、暴言や脅迫、土下座の要求、長時間の拘束、執拗な電話やSNSでの攻撃など、「伝え方・求め方」が行き過ぎたケースだと考えられます。

もっとも、どこからが「行き過ぎ」かは業種や状況によっても異なり、最終的には個別の事案ごとの判断にならざるを得ない面があります。

2. 2026年10月から何が変わるのか

これまでも、パワハラやセクハラについては企業に対策が義務付けられていましたが、カスハラは「社外の人」からの行為であるため、法律上の位置付けが明確ではありませんでした。

2025年6月に成立した改正法「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第63号)」により、カスハラ対策が事業主の「雇用管理上の措置義務」として明文化され、2026年10月1日から施行されます。

対象は業種・規模を問わず、従業員を雇用するすべての事業主とされています。中小企業への猶予期間は設けられていないとされる点には注意が必要です。

また、対象となる「顧客等」には、一般消費者だけでなく取引先(BtoB)も含まれ、対面に限らず電話やSNS上の言動も問題になり得ると整理されています。

3. 企業に求められる具体的な対応

厚生労働省の指針等を踏まえると、企業に求められる対応は概ね次のように整理できると考えられます。

第一に、カスハラには毅然と対応するという方針を明確にし、従業員に周知すること。

第二に、従業員が相談できる窓口を整備し、対応の手順(マニュアル)を用意すること。

第三に、実際にカスハラが起きた場合に、事実関係を速やかに確認し、被害を受けた従業員への配慮(配置転換やメンタルケアなど)を行うこと。

そして、相談した従業員のプライバシーを守り、相談したことを理由に不利益な取扱いをしないことです。このほか、悪質な行為への対処方針(警告や出入り禁止、法的措置など)をあらかじめ定めておくことも重要と考えられます。

なお、同じ2026年10月1日には、就職活動中の学生等に対するセクハラ(いわゆる就活セクハラ)の防止措置も義務化されます。採用活動を行う企業は、あわせて確認しておくとよいでしょう。

4. 違反するとどうなる?――罰則はないが「公表」も

義務に違反した場合の直接の刑事罰は設けられていないと解されています。ただし、行政による助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合には企業名の公表があり得るとされています。

罰則がないからといって軽視できるものではなく、対応を怠れば、従業員に対する安全配慮義務(会社が従業員の心身の安全に配慮すべき義務)違反として損害賠償責任を問われるリスクや、人材確保・企業イメージへの影響も考えられます。

5. 「顧客」の立場でも無関係ではありません

この改正は企業向けのルールですが、私たちは誰もが「顧客」になります。

今後は、行き過ぎた要求やクレームに対して、企業側が警告や取引拒否、場合によっては法的措置といった毅然とした対応を取りやすくなると考えられます。

感情的になりやすい場面でも、伝え方には注意したいところです。他方で、正当な苦情まで萎縮する必要はありません。「何を求めるか」と「どう伝えるか」を分けて考えることが、一つの目安になるように思われます。

おわりに――施行までの1か月でできること

施行まで残り1か月。

まだ準備が進んでいない企業でも、①基本方針の作成と周知、②相談窓口の決定、③初期対応マニュアルの整備、といった基本的な部分から着手することは十分可能と考えられます。

どこまでの対応が必要かは業種や事業規模、顧客層によっても異なりますので、就業規則の見直しやマニュアル整備を含め、具体的な対応にお悩みの場合は、弁護士など専門家にご相談いただくことをお勧めします。