職務著作、職務発明の要件
会社の従業員が仕事上で著作物を制作したり、何らかの発明をして特許を取得したりしたら、
生み出された著作物や特許の権利は誰に帰属するのでしょうか?
原則的には「著作者」、「発明者」である従業員に権利が認められます。
ただ、そうなると、会社運営に必要な権利を会社が自由に使えず経営に支障が及ぶ可能性もあるでしょう。
そこで「職務著作」、「職務発明」といって、会社に権利を帰属させる制度がもうけられています。
今回は、職務著作や職務発明が認められる要件について解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.職務著作が認められる要件
著作権は、思想や感情を創作的に表現した「著作物」に対し、制作した「著作者」に認められる独占的な権利です。
従業員が作成した以下のようなものに著作権が認められます。
- 写真、動画
- イラスト
- 文章
- 音楽
- ダンス
- 演劇
- コンピュータプログラム
- 建築物
上記のようなものについては基本的に「従業員」に著作権が認められますが、
「職務著作」の制度により、以下の4つの要件を満たせば、
「会社」に著作権が認められる可能性があります。
法人等の発意にもとづく
会社が立てた企画によって著作物が制作されたことが必要です。
法人等の業務に従事する人が職務上作成した
会社に雇用されて会社業務に携わる人が仕事として著作物を作成したことが必要です。
ただしプログラムの著作物の場合、この要件は不要です。
法人等の名義で公表する
作成された著作物は従業員名ではなく会社名義で公表しなければなりません。
契約、勤務規則その他に別段の定めがない
契約や就業規則などにより、個別に「著作権は従業員に帰属させる」などと規定されていたら、職務著作の制度は適用されません。
2.職務発明が認められる要件
新規性、進歩性があって高度な発明を特許庁に申請すると「特許権」が認められる可能性があります。
従業員によってなされた発明であれば、基本的に従業員本人に特許権が認められるのが原則です。
ただし「職務発明」の制度を適用すると、会社に特許権が認められる可能性があります。
職務発明を適用するには以下の要件を満たさねばなりません。
契約や規則で職務発明に関する規定をもうける
労働契約や勤務規定などにより、
あらかじめ「職務上の発明については会社に特許権を認める」ことを明らかにする必要があります。
従業員が特許を取得して会社に承継させてもかまいませんし、はじめから会社が特許権を取得する内容でも有効です。
相当の利益を与えること
職務発明を適用するには、従業員に相当の利益を与えねばなりません。
金銭補償に限らず、以下のような方法で対価的な利益を与えることができます。
- 金銭による補償
- 株式、ストックオプションの付与
- 会社が費用負担して留学させる
- 昇給、昇格によって利益を与える
- 有給休暇を追加で与える
- 職務発明の利用権の付与
ただし、相当の利益は会社側と従業員側が協議して定める必要があり、
会社が一方的に定めることはできません。
従業員による著作物、発明の取り扱いは企業にとって悩ましい問題となるでしょう。
迷ったときには弁護士までお気軽にご相談ください。