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内部通報をめぐるルールが大きく変わります――12月1日施行・改正公益通報者保護法のポイント

公開日:2026/10/26 / 最終更新日:2026/11/07

2026年12月1日施行の改正公益通報者保護法では、通報を理由とする解雇・懲戒への刑事罰や、通報後1年以内の解雇・懲戒に関する報復推定が導入されます。フリーランスや退職後1年以内の人も保護対象となり、通報者探しや通報妨害も禁止されます。

企業には、対象者を踏まえた通報窓口や情報管理、人事措置の確認手続などの見直しが求められます。体制整備義務は主に従業員301人以上の事業者に課されますが、通報者保護規定は事業規模を問わず適用されます。

はじめに

2026年12月1日、改正公益通報者保護法が施行されます(2025年6月11日公布・令和7年法律第62号)。今回の改正は、通報した人への報復行為に刑事罰を科すなど、これまでの法律の枠組みを大きく一歩進めるものと受け止められています。

施行まで残り1か月を切ったこのタイミングで、企業のご担当者と働く方の双方に向けて、改正のポイントを整理します。

公益通報者保護法とは

公益通報者保護法は、勤務先などの法令違反を然るべき窓口に通報した人(公益通報者)が、そのことを理由に解雇や降格などの不利益を受けないよう保護するための法律です。

2004年に制定され、2020年の改正では、従業員301人以上の事業者に内部通報体制の整備が義務づけられました。もっとも、通報者が実際に不利益を受けた場合の救済は民事的なもの(解雇の無効など)が中心で、実効性に課題が残ると指摘されてきました。

今回の改正で何が変わるのか

今回の改正の柱は、大きく分けて4つあると整理できます。

(1)通報者への報復に刑事罰

通報を理由として解雇や懲戒を行った場合、行為者個人に6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、法人にも3,000万円以下の罰金が科され得る直罰規定が新設されました(両罰規定)。

「拘禁刑」は、従来の懲役・禁錮を一本化した刑です。報復行為そのものが犯罪になり得るという点で、企業の人事判断に与える影響は小さくないと考えられます。

「刑事罰(個人の拘禁刑・罰金、法人の最大3,000万円の罰金)」の対象は、「解雇・懲戒」に限定されています。

(2)「通報から1年以内」の不利益は報復と推定

公益通報の日から1年以内に行われた解雇・懲戒は、通報を理由とするものと法律上推定される規定が設けられました。

推定を覆すには、事業者側が「通報とは無関係の正当な理由があった」ことを立証する必要があります。立証責任の所在が通報者側から事業者側へ事実上転換される点で、訴訟実務にも影響する改正といえます。

なお、解雇・懲戒以外の不利益取扱い(配転・減給など)は、「その他の不利益取扱い」として、法律で明確に禁止されていますが、これらには原則として法定の推定規定や直罰は適用されません(ただし、通報直後の不自然な異動などは実務上「通報が理由」と事実上推認されやすいため、同様に客観的な理由の記録が不可欠です。)。

(3)フリーランスも保護対象に

これまで保護の中心は労働者や役員でしたが、改正により、業務委託を受けるフリーランス(特定受託事業者)や、契約終了後1年以内の方も保護対象に加わります。契約の打切りや取引条件の一方的な不利益変更が、不利益取扱いとして問題になり得ます。フリーランスに業務を委託している企業は、委託先からの通報も想定した窓口運用が求められることになります。

(4)通報者探しの禁止と体制の実効性強化

正当な理由なく通報者を特定しようとする行為(いわゆる「犯人捜し」)や、通報の妨害が明文で禁止されます。また、通報対応の担当者(従事者)の指定義務に違反した場合には、勧告にとどまらず是正命令や罰金まであり得る仕組みとなり、消費者庁による立入検査などの権限も整備されます。

企業がいま確認しておきたいこと

施行までに確認しておきたい事項としては、たとえば次のようなものが考えられます。

内部通報規程がフリーランスや退職後1年以内の退職者からの通報を想定した内容になっているか。

従事者の指定が書面等で明確にされ、通報者の特定につながる情報の管理ルールがあるか。

通報者に対する人事上の措置を行う前に、通報との関係を確認するプロセスがあるか。

業務委託契約の運用が、通報を理由とする契約解除と受け取られないものになっているか

などです。

なお、体制整備義務が課されるのは従業員301人以上の事業者で、300人以下は努力義務とされていますが、不利益取扱いの禁止や刑事罰などの通報者保護の規定は、事業者の規模を問わず適用されると解されています。

そのため、中小企業であっても無関係ではない点に注意が必要です。

働く方・フリーランスの方へ

通報を考えている方にとっては、保護の範囲や手厚さが広がる改正といえます。もっとも、保護を受けるには法律上の「公益通報」に当たることが前提で、通報対象となる事実の範囲や通報先のルールなど、一定の要件があります。

保護されるかどうかは事案ごとの判断となりますので、迷われる場合は事前に弁護士等へご相談いただくのが安全と考えられます。

おわりに

今回の改正は、内部通報制度を「形だけ整える」段階から「実際に機能させる」段階へ進めるものと評価する見方が一般的です。他方で、推定規定の運用など、実務の細部は今後の指針や裁判例の集積を待つ部分も残ります。

当事務所でも、内部通報規程の見直しや研修などのご相談を承っています。


※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については、個別の事情を踏まえた検討が必要ですので、弁護士にご相談ください。


出典(参照した法令・資料・記事)