労災事故の際、使用者側に求められる対応とは
労災事故が発生すると、事業主には適切な対応を求められます。
労災事故に関する報告、労働者による労災保険申請や各種捜査への協力、さらには事故の原因究明や再発防止にも務めるべきです。
また、事案によっては、労働者から民事や刑事で責任追及されるおそれもあるので注意が必要です。
以下では労災事故の際に望ましい使用者側の対応方法をご説明していきます。
1.救護と現場の保存
労災事故が起こったら、まずはけがをした労働者の救護を行い、必要に応じて救急車を呼びましょう。
また事故現場の保存も重要です。後に捜査が入る可能性もあるので、物を動かしたり片付けたりせず、
なるべくそのまま置いておきましょう。
写真撮影をしたり説明図などを作ったりして自社でも証拠化しておくことをお勧めします。
2.労働基準監督署への届出
労災事故が発生したら、労働基準監督署への報告が必要です。
火災や爆発、建物の倒壊、破裂事故などが発生したら「労災事故報告書」を作成して提出する必要があります。
労働者が加療4日以上のけがを負ったり死亡したりした場合には「労働者死傷病報告書」を提出しなければなりません。
労災を隠すと労働安全衛生法違反となり、罰則が適用される可能性もあるので必ず報告すべきです。
報告書類は、事故発生後1~2週間の間には提出しましょう。
事故後1か月以上経過すると、労基署から提出が遅れた理由について書面での回答を要求されるケースもあるので注意が必要です。
3.労災保険の申請手続に協力する
労災事故が起こったら、労働者は労災保険の申請をして各種の給付を受けることができます。
労災保険の申請書には会社が記名押印する欄があります。
業務起因性のある事故であるか、きちんと確認した上で、適切な労災給付を受けられるように協力しましょう。
なお、労災保険への加入は事業者側の義務なので、必ず加入手続きをしておくべきです。
「労災保険に入っていないことがバレると困る」などと考えて事故の報告を怠ったり、
労災給付に非協力的な態度をとったりしてはなりません。
4.労基署や警察の捜査に協力する
社内で労災事故が起こったら、労基署や警察の捜査が入るケースもありますが、捜査にはできるだけ協力すべきです。
自社の責任を問われるのをおそれて非協力的な態度をとると、かえって状況が悪化する可能性があります。
5.民事の賠償に対応する
会社側の安全管理が不適切であったために事故が発生したケースでは、労働者から民事賠償を求められる可能性があります。
その場合には、本当に会社側に責任があるのか、あるとすればどの程度の損害賠償義務があるのかを確定しなければなりません。
基本的には交渉によって賠償責任の有無や方法を定めますが、
話し合いで解決できない場合には労働者側から訴訟を起こされる可能性もあります。
6.原因究明と再発防止措置に努める
労災事故が起こったら、二度と同じような事故が起こらないようにしっかりと原因究明をして再発防止措置をとるべきです。
安全管理を怠ったために二度目の事故が発生したら、民事・刑事の両面で重い責任を科される可能性が高くなります。
社内で労災事故が起こったときの対応に迷われたなら、お気軽に弁護士までご相談下さい。